専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第13回わが家のお仏壇物語
「チーン、チーン、チーン」
朝の静けさを打ち破るように、仏間にお鈴の音が響き渡った。
東京から帰省した娘夫婦の子どもたちが、我先に仏壇の前の座布団に向かう。今日はどちらがお鈴を鳴らすかで、可愛い争いを始めたようだ。
勝負に勝った二歳の妹が、嬉しそうにはしゃぎながらお鈴を鳴らす。
四歳になるお兄ちゃんは両手を合わせてから、おもむろにお祈りを始めた。
「今日も新しい一日が始まりました。おいしいご飯を用意してくれて、ありがとうございます。でも、ご飯を食べられないお友だちもいます。そのお友だちもいっぱいご飯を食べられますように」
小さな子どもとはいえ、そのお祈りの内容の立派さに、目をウルウルさせながら聞いていた。還暦過ぎの私でもそんなことは思い浮かばない。
「……、アーメン」
えっと思ったものの、すぐに合点がいった。そう言えばお兄ちゃんはミッション系の幼稚園に通っていたのだ。毎日お昼ご飯の時には、そのようなお祈りを捧げているという。
「まあ、いいか。神様であろうと仏様であろうと、こうやって手を合わせていることが大事なんだ。うちのご先祖様は、お祈りの仕方の違いなんかで怒ったりしないよ」
私は孫たちの後ろ姿を微笑んで見ながら、そんなことを思った。
最後にもう一度、孫たちは二人でお鈴を鳴らし、歓声を上げながら居間へ駆け抜けていった。
「チーン、チーン」
ご先祖様、今年も賑やかなお盆がやってきましたよ。