仏壇選びの達人

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第13回わが家のお仏壇物語

佳作「お父さん、これでどうでしょう」 宗政由美子(宮城県・58歳)

 

20年前の春、父が亡くなった。父は家を建てた際に居間の一角に木枠でぐるっと囲まれた奥行きのあるスペースを仏壇を置く場所として作った。しかし、そこは父が亡くなるまで空いたままで、時々ヒーターを置く所になったりして不思議な空間になっていた。

父が亡くなって間もないある日、母が「さあ、仏壇を買うわよ。」とおもむろに立ち上がった。なんの前触れもなく、突然その日仏壇を買いに行くと言う。一緒について行った私は訳もわからず多くの展示してある仏壇に戸惑うばかりだ。いつもは慎重に事を進める母がこの時ばかりは即決。数日後、我が家に届いた仏壇は父の用意した仏壇のスペースに吸い込まれるようにしてピッタと収まった。まるで以前からそこに収まることに決まっていたかの様になんの違和感もなく鎮座した。「お父さん、これでどうでしょう?」と母は父の位牌に自分で選んだ仏壇を見せる様に尋ねる。父の位牌は母の手で仏壇にすうっと収まり、自分の定位置が決まった感じだ。あの時の仏壇と母の様子は今も忘れられない。心なしか母が安堵したように見えた。

その12年後、その母が亡くなり、私は母の位牌を父の位牌より少しだけ下がった横に置いてみた。いつも父より一歩下がって歩いていた母の定位置のような気がしたからだ。そして母に居心地を確かめるように聞いてみた。「お母さん、これでどうでしょう?」と。

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