専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第13回わが家のお仏壇物語
「誕生祝いに、仏壇を贈るから」「えっ、仏壇?」長男の1歳の誕生祝いに父が贈ってくれたのはなぜか小さなお仏壇でした。
つるりとした木の質感が美しい茶色の仏壇。細部まで施された素晴らしい芸術の世界に圧倒されました。かつて聞いたことのある「お仏壇は世界最高の芸術品だ」と言う言葉を思い出しました。
静かに毎日手を合わせていると不思議に回りの人や今ある環境に感謝する気持ちが湧いてくるようになりました。
忙しく流れるように過ぎていく日々の中で一日に一度手を合わせるときが、立ち止まり、反省の時になっているのでした。父が日頃からよく言っていた言葉、「お陰さま」ってこういうことかと思いました。
無学の私に父が仏壇を送ってくれた意味が分かり、父の優しさ、ぬくもりを感じました。
足に障害のある私は辛い経験をすることもありますが、手を合わせることで心の安らぎを感じています。
お盆が近づくと誰もが今は亡きあの人この人のことがなつかしく思い出され、酷暑が続く日々なのに、身辺は深々と慕わしい情緒に満たされていきます。この世とあの世、生と死の間に心を遊ばせ、自然と神妙な気持ちになるのが不思議です。これも長い間に培われた日本の伝統文化の賜物といえましょう。これからも我家では大切にしていきたいと考えております。
この部屋では週に一度、小1と小5の孫娘と習字とてん刻の稽古をしております。稽古が終ったあと私の拝む姿をみて、孫達も仏壇の前で手を合わせるようになりました。孫達はまだお仏壇の前で手を合わせる意味はよく理解していないと思います。私がかつてそうであったように。
最初はそれでいいのだと思い、今は静かに見守っています。