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第13回わが家のお仏壇物語

田中佛檀賞「とらじろうさん」 木村 栞(青森県・16歳)

 

うちのお仏壇には虎のぬいぐるみがいる。
ちなみに名前は平仮名でとらじろうさん。
なぜお仏壇の中にぬいぐるみがあるのか、よく尋ねられる。

とらじろうさんには昨年亡くなった祖母と私の1年間の思い出が全て詰まっているのだ。
とらじろうさんが我が家に来たのは、2年前。
私が中学の修学旅行で訪れた上野動物園で自分用のお土産として購入した。
ちょうどその時期、祖母の重い病気が発覚し、祖母は入退院を繰り返すようになった。
修学旅行から帰って、真っ先に向かった病院で祖母にとらじろうさんを見せた。
祖母はすっかりとらじろうさんのことを気に入り、自分のもののように持ち歩くようになった。
しかしそんな中、新型コロナウイルス対策で入院している祖母に面会できない日々が始まった。急に孤独になってしまった祖母は毎日病院でとらじろうさんに話しかけていたという。
そして、とらじろうさんが我が家に来てから1年。祖母は他界した。
最後まで1人で病気と戦った祖母と一緒にとらじろうさんも棺に入れてあげたいと叔母に頼まれた。でも私は断った。その代わり、うちの立派なお仏壇に一緒に置いてあげることにした。

お仏壇に置かれたとらじろうさんを見て、父がつぶやいた。
「そういえば、先に亡くなったじいちゃんは寅年だったよね、とらじろうさんはきっと、じいちゃんだったんだ。ずっとばあちゃんを見守っててくれたんだね」
それを聞いて私は涙が止まらなかった。

あれから1年、私は毎朝お仏壇に向かって大きな声で「おはよう」と言う。
とらじろうさんは今高校2年生になろうとする私をじいちゃん、ばあちゃんと一緒にお仏壇の中から見守っていてくれる。

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