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第13回わが家のお仏壇物語

佳作「祖父母との思い出」 荒川萌香(神奈川県・28歳)

 

祖父母の家にあるお仏壇は、高さが約130センチの所にある。

幼い頃、背の小さかった私はその全貌を見ることができなかった。

毎年お盆とお正月には、祖父に抱っこしてもらい、線香を上げていた。

「線香の煙は、あの世とこの世をつなぐんだよ。」

そう教えてもらっても、あまりピンとは来なかった。

祖父母と私の3本のお線香を、下からじーっと静かに見つめる私。

消えるのを見届けてから、唯一手の届くところにあったお鈴を、まるでご先祖様への合図かのように、誰にも聞こえないように静かに鳴らす。

身長が伸びてくると、少しずつお仏壇の中の様子が見えてきたが、全てを見る前に私は引っ越し、祖父母の元を離れた。

一昨年、大好きな祖母が亡くなり、祖母の遺影と位牌がお仏壇に飾られた。

お仏壇の前に立つ。

目線の高さに祖母がいる。

今度は私が、隅にたまったほこりを払い、祖母の好きだった花を飾り、祖母の湯飲みにお水をいれ、たくさん話しかけた。

それから祖父は老人ホームで暮らしているが、私の帰省と合わせて、家族三人の家で過ごすことにしている。

そこには祖父と私の2本の線香が並ぶ。

煙の先で笑う祖母を思い浮かべながら、祖父と二人、思い出話をする。

 

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