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第17回わが家のお仏壇物語

金賞 「そのままでいいんだよ」小林博子(愛知県・39歳)

祖父が死去した翌年、私の「発達障害」が判明した。社会に適応できず、対人関係に悩み、転職を繰り返していた。

「私って変だよなぁ?」と聞くと生前の祖父はこう言ってくれた。

「ヒロコは何も変じゃない」

祖父の仏壇の前で

「じいちゃん。私やっぱり変だったよ」

と呟いた。

それからも様々な事があった。「双極性障害」を併発し、理解が難しい障害の事で、父母との衝突を繰り返し、薬の副作用で家の中で暴れまわる事もあった。自暴自棄になり自殺未遂も二回し入院もした。何もかも嫌だった。何よりこんな自分自身が嫌だった。

辛くなると、祖父の仏壇がある部屋で号泣した。なぜだかこの場所が落ち着いた。いつしかこの部屋が私の「クールダウンの場所」となっていた。そして涙を拭い見上げた先には、いつも微笑む祖父の遺影があるのだ。

その顔を見ると

「ヒロコは何も変じゃない」

と励ましてくれる。

「そうなのだ!私だって本当は自分を変だと思いたくない!」と気付かせてくれるのだ。

現在もこの部屋は、私が帰省した際に寝る場所になっている。そう、私は七年前に結婚し一児の母になった。新しい家族が出来たのだ。だが、障害と共生しながらの結婚生活は想像以上に大変だった。今この瞬間も、私は悩み苦しみ生きている。やっと掴んだ「幸せ」を手放さない為に!家族の歴史を私から息子へと繋ぐ為に必死だ。

「ヒロコの子供が見たい」

と言っていた祖父や愛する息子、支えてくれる家族の為にも!そして何より自分自身の為に!

「じいちゃん。私ちゃんと生きてるよ!」

今日も私は祖父にそう語りかける。隣には私にピタリと寄り添う息子がいる。その上には変わらず微笑む祖父の遺影がある。

今、私は祖父の言葉をこう感じるようになった。

「そのままのヒロコでいいんだよ」

「じいちゃんはどんなヒロコでも嫌いにはならないんだよ」

じいちゃん!これからの私もずっと見守っててね。前を向いて歩んでいくから!

仏壇公正取引協議会
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