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第17回わが家のお仏壇物語

佳作「お浄土に諍いなし」久井孝則 (大阪府・72歳)

6年前、義父が亡くなってから一人暮らしを続けていた妻の母も亡くなり、実家が空き家となってしまった。わが家からは、車で10分程度の距離だったので、時々空気の入れ替えと掃除に訪れた。時間が止まってしまった生活感のない家で、いつも気になったのがお仏壇である。

当初は、旦那寺に月参りをしてもらっていたが、私たち夫婦と日時が合わないことが多く、ついにはストップしてもらった。私たちがご仏壇にお参りに行けるのも、せいぜい月に一度。お参りするたびに、人の気配が消えてしまった家に鎮座するお仏壇から、

「寂しいよ~ もっと会いに来て~」

と言う母の声が聴こえるような気がした。

「お仏壇、なんとかせんとなぁ」

「私もそれが気になってんね~」

「宗派も同じやし、いっそわが家のお仏壇に一緒に祀ってもらえんかなぁ」

「でも窮屈になるし、亡くなったお父さんとお母さん、いやがるのと違う」

いくら亡くなっているとはいえ、血縁関係の全くない仏様たちを同じお仏壇で一緒にすることには、私も些か不安を持っていた。そこで、旦那寺の住職に事情を話して相談をもちかけた。

「それは、ぜひ合祀してあげなさい。心配しなくてもお浄土に一切の諍いはありませんよ。それが極楽浄土です」

双方の旦那寺の快諾を得て、閉眼と開眼の供養。位牌はお仏壇の左右に分けて設置し、遺影はお仏壇の左上へ。四人の仏様の笑顔が並んだ。また、なぜかこれまで我が家になかった木魚も一緒に持ち帰った。

位牌と遺影が倍増したお仏壇の前で、毎朝私は木魚を叩いて、「仏様、全員集合!」と声をかけ読経している。目を閉じると、一切の諍いもなく平和で穏やかな極楽浄土が見えた。

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