専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第17回わが家のお仏壇物語
物心ついたときから、私の部屋には、父の仏壇が置いてありました。
幼い頃、私は母に、「どうして私の部屋に仏壇を置くの」と聞いたことがあります。
すると、「パパが生きていたら、ここはパパの部屋だったから」と返ってきました。
自分の部屋が狭く感じるので、あまり置いてほしくなかったのですが、私はそれ以上何も言いませんでした。
母と私は毎日、仏壇のお水を変え、お線香をあげて、お祈りをしました。
母は、事あるごとに、私の写真や、私が母に宛てた手紙を父の仏壇に飾っていました。
私は小学生でピアノを習い始め、家でも練習できるようにピアノを買ってもらいました。
私の部屋にある仏壇の隣に、ピアノが置かれ、私は毎日練習しました。
ピアノの発表会では、母と連弾で演奏しました。私の部屋で母と発表会の練習をしている時は、仏壇の父を含め、家族3人が同じ空間にそろっていた時間でした。
中学生になる前に、私はピアノを習うのをやめましたが、私に代わって母がピアノを習い始めました。
社会人になって、私は一人暮らしをするため実家から出ました。
久しぶりに実家へ帰省すると、母は仏壇を新調していました。
「前の仏壇は大きすぎたから、コンパクトにしたかったのよ」と教えてくれました。
新しい仏壇は段ボール箱1個分くらいの大きさで、色も黒から明るい茶色になっていました。
新しい仏壇は、以前の私の部屋ではなく、寝室に置かれていました。私が実家から出て行った後、私が使っていたベッドを処分し、空いたスペースに新しい仏壇と、その隣にピアノを並べて置いていました。
母のピアノ歴は、今年で20年目を迎えます。
母はずっと、ピアノに熱心でした。それはまるで、家族の思い出を慈しみ、大切にしているかのようです。
母は今日も、父の隣で、ピアノを奏でています。
そして、もしこの先、母がピアノを弾けなくなったら、今度は私が、思い出のピアノを奏でるつもりです。