専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第17回わが家のお仏壇物語
子供の頃、家の仏壇が少し怖かった。家の中でも日当たりの悪い座敷にあり、昼間でも薄暗い。仏間に足を踏み入れるとひんやりとした空気が漂い、木魚や線香の香りがどこか厳かな雰囲気を醸し出していた。ご先祖様を祀る大切な場所だと分かってはいても、子供の私にとっては近寄りがたい存在だった。
しかし、大人になり、自分の家族を持つと、仏壇に対する考え方が少しずつ変わってきた。我が家の子供たちには、私のように仏壇を避けてほしくない。むしろ、自然と親しみを持ってほしい。そう思い、私はある工夫を凝らした。
それは「お菓子をお供えすること」だ。最初は控えめに和菓子を置いてみたが、子供たちはあまり興味を示さなかった。そこで、彼らの好きなチョコレートやクッキーを供えてみると、途端に仏壇の前に集まるようになった。「手を合わせたら一つ食べていいよ」と言うと、子供たちは真剣に手を合わせる。ご先祖様に向かって何を祈っているのかは分からないが、とりあえずは仏壇に親しんでくれているようだった。
さらに、仏間の雰囲気を少しでも明るくしようと、季節ごとに飾り付けを工夫した。仏壇の側にある床間でひな祭りには雛人形を飾り、端午の節句には兜を置いた。そして、思い切ってクリスマスツリーも飾ってみた。和の空間に突如現れたツリーは、なんともミスマッチで思わず笑ってしまったが、不思議と家族みんなで仏壇の前に集まる時間が増えた。
こうして、昔は薄暗くて怖かった仏壇が、今では家族が自然と集まる場所になった。きっとご先祖様も、にぎやかになった仏間を楽しんでくれているに違いない。