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第17回わが家のお仏壇物語

銅賞「ありのままの姿」三宅加代子 (福岡県・78歳)

昭和55年冬医師によばれ、「がん」であることを告げられた。「まさか!」私はうろたえた。今ほど医学も進んでおらず、がんは即、死だと思っていた。事態の急変に、心がついていかなかった。なぜ健康な私が、病気になるのかが信じられなかった。

死を覚悟していた。

夫は毎日仕事が終わると見舞いに駆け付けてくれた。

手は注射の跡で青ずみ、顔色も冴えず、体重も減った。夫は手をさすり、静かに語りかけてくれた。

「大丈夫だよ」と言ってくれた。毎日仏壇の前で3人の息子と手を合わせているとも言った。

スタッフの皆様方の懸命な努力と幼い3人の子供を残して死ねないという強い気持ちが通じたのか、奇跡的に病は治った。

退院時「よかった。よかった。よく頑張りましたね。もう大丈夫ですよ」と言ってくれた医師の嬉しそうな表情が今でも忘れられない。

夫は御仏の加護があったからだと言い、今も毎朝お仏壇の前で手をあわせている。

3人の子ども達も家を出、二人だけの生活に戻った。我が家の歴史と共にあるのがこのお仏壇だと思うようになった。

年をとると、この先どうなるのか不安になることもある。お仏壇の前に座るとなぜか気持ちが楽になり、何とかなるだろうと言う気にさせて頂く。

ありのままの姿、等身大でいいではないか。今の自分はこの程度だと素直に認めることも必要であろう。御仏は静かに教えてくれる。

ささやかでもいい。まずは家族や身近にいる人達が幸せに、穏やかに暮らせるようお仏壇の前で祈っている。

新しい年度を迎えるのを機縁に私達2人の考えと行動も新鮮でありたい。二人に残された時間はもうそれほど多くはない。

 

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