仏壇選びの達人

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第17回わが家のお仏壇物語

佳作「夫がいる白いモダン仏壇」豊代惠子 (石川県・60歳)

マイホームを、と注文住宅建築の計画を立てていた二十年前。離れて暮らす舅から、仏間や仏壇は入れないのかと提案された。しかし夫は、それに対してはっきりと、

「仏壇はいらない。畳の部屋も必要ない」

迷うことなく言い切っていた。思い描いた洋風の家には合わないと。

しかし、その十数年後。誰も想像もしていなかった猛威のコロナウイルス感染症、その混乱に巻き込まれ……罹患し重症化した夫は――永眠の眠りについてしまった。

マイホームに仏壇を入れることを少しも想定していなかった私たち夫婦だったが――。独りになり、じっくり考え抜いた末、四十九日を過ぎて間もなく小さな仏壇を購入した。和室のない我が家にも違和感なく馴染むシンプルな家具調タイプのもの。コンパクトなサイズで、ふたを閉じてしまえば仏壇には見えないインテリアとなる。

魂入れにいらした僧侶からは、

「いろんなおうちに寄らせてもらいましたが、こんな真っ白の仏壇は初めてですよ」

と質素な四角い仏壇を物珍しそうに眺められた。

僧侶なら、紫檀や黒檀、金箔張りが施された重厚な仏壇を中心に見てこられただろうと想像し、みすぼらしいような恥かしさもあった。だが、豪華な仏壇は我が家には重すぎるし、天国の夫も望んではいないだろうと小さく自分を励ました。

それからは月命日にも来訪をお願いし、読経での月参りをしばらく続けることにした。

ただ、本家のような宗派に沿った立派な仏壇を購入しなかったことで度々小言もあった。

「まともな仏壇もないのに……」

そう、こぼした姑も平均寿命を全うし、亡くなってもう一年が経つ。

ろうそくと線香に火を灯し、おりんを鳴らして数珠を手に合掌する。仏壇の前に座ったまま時間が経つのも忘れて、ぼーっとすることがよくある。

流れる月日にいつの間にか夫の年齢に追いつき、先日とうとう追い越した。

――歳を重ねていく私を、どうか今後とも見守っていてください。

仏壇公正取引協議会
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