専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第17回わが家のお仏壇物語
わが家のお仏壇は、父が59歳で旅立ってから母と私が大切に守り続けてきました。
父は生前、明るくて家族思いの人でした。どんなに忙しくても家族との時間を大切にし、笑顔が絶えなかった私たち。そんな父がに逝ってしまった日、心にポッカリと大きな穴が開いたように感じました。その穴を少しずつ埋めてくれたのが、このお仏壇でした。父が好きだったものを絶やさず、母と私は細やかな気持ちでお供え物を選んできました。父が好きだった果物、春には桜の枝、夏にはヒマワリなど季節ごとの花も欠かしません。お供えをするたびに、父が「ありがとう」と微笑んでくれるような気がして、心が温かくなるのです。
ある冬の朝のこと。その日は特に寒く、お仏壇に供えたリンゴも冷たくなっていました。「お父さん、寒くない?」と心の中で問いかけながらろうそくを灯し、手を合わせました。ふと仏壇を見上げると、母も同じように手を合わせながら「お父さんがいたら、こんな寒い日はまた甘酒でも作ってくれたね」と笑顔で話しかけていました。その瞬間、父が本当にそこにいて、私たちを温かく見守ってくれているように感じ、涙がこぼれました。
お仏壇の前で過ごす時間は、ただ手を合わせるだけの時間ではありません。父の思い出を母と語ったり、悩みを父に相談したりする大切なひととき。「お父さん、今日はこんな事あったよ」「こんな悩みがあるんだけど、どうしたらいい?」と話すと、なぜか心が軽くなります。母と一緒に「お父さんならこう言うだろうね」と笑い合うのも日々の励みになっています。
お仏壇は、亡き父との絆をつなぐだけではなく、家族としての温もりを再確認する場でもあります。父が教えてくれた家族の大切さ、思いやりの心を忘れずに、これからも母と共にお仏壇を守り続けていきたいと思います。お仏壇を囲むたびに、父の愛情に包まれている事を実感し、今日も私は手を合わせています。