仏壇選びの達人

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仏壇と仏壇店情報

第17回わが家のお仏壇物語

佳作「寿司とスワロフスキーが似合う新居」永田芽衣 (東京都・26歳)

「おばあちゃんと遊ぶのは、お線⾹あげてからね。」

そういわれるのが憂鬱に感じる程、⼦どもの頃、仏壇が怖かった。
明るいおばあちゃんの家で唯⼀「死」を感じる場所だったから。
3年前の夏、私の⺟は51歳という若さでこの世を去った。
⻑く闘病を続けていたため、「いつかは」と覚悟はしていたがこの先をともに⽣きられない、もう⼆度と話せないという悲しみは尽きない。

葬儀のあと、⽗と妹と、仏壇を⾒に⾏った。
私の家にも、祖⺟の家のように「死の象徴」を置くスペースができるのかとぼんやり考えていると、荘厳な雰囲気の仏具屋には不似合いな「ファンシーな仏像」を⾒つけた。
頭や光背に宝⽯のようなものが散りばめられている。
「なんじゃこりゃ」と驚いていると、「すごいでしょ、これ全部スワロフスキー。こだわって取り寄せたから、数体しか置いてないんです」と奥から出てきた店主も誇らしそうだ。
仏像にスワロフスキー。
その不謹慎な響きに、悲しみで⿇痺していた⼼が、少しだけ動いた。
店主が合わせて持ってきてくれたアンティーク調の仏壇も、⺟が⽣前好んでいたテイストにマッチしていた。
⼤きな買い物をするときは⺟の意⾒が反映されがちな我が家だったからこそ、私たちには確信があった。
「お⺟さん、絶対気にいるわ。」
全員⼀致で、ファンシーでシュールな仏壇を迎えることになった。

仏壇を購⼊したあと、⽗は寿司のフィギュアを買ってきた。
⺟は寿司が⼤好物だったから、毎⽇ネタを変えてお供えするそうだ。
こうして、こだわりぬいた⺟の新居が完成した。
仏壇の電気をつけると、スワロフスキーの仏像がキラキラと輝き出す。
シュールなものが⼤好きな⺟と⽬が合っているようで、ニヤニヤしてしまう。
今⽇の寿司ネタを確認しながら、⺟に挨拶する。この時間が⼤好きだ。
⺟のおかげで、仏壇は「死を痛感する場所」ではなく、「⼤切な故⼈と話せる場所」になった。

仏壇公正取引協議会
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