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第3回わが家のお仏壇物語

田中佛檀賞「祖母への一言」川渕紫(福岡県・34歳)


祖母が亡くなったのは私が12歳のとき。
 反抗期の私は、祖母が病気で入院していたにもかかわらず、見舞いにほとんど行かず、行っても優しい言葉をかけるどころか
「おばあちゃんが入院してると家の手伝いが増えて迷惑なんよね」
 などと、ひどいことを言った。でも
「来てくれてありがとう。遊びたい盛りなのに手伝いさせて悪いね。すぐ良くなって退院するから待っとってよ」
 と答える祖母。
 そんな祖母が3年の闘病の末、他界した。亡くなった瞬間に立ち会ったけれど、実感が湧かないまま迎えた葬儀の日。火葬場で、本当にさよならだと思うと、急に怖くなり自分でも驚くほど号泣した。そして自分がしたことを悔いた。どうやってごめんなさいを伝えようか悩んだ。
「仏壇に手を合わせること」
 これが私なりの祖母への感謝と謝罪だと思っている。
「今までごめんなさい。ありがとう」
「私、結婚します。幸せになるよ」
そして、妊娠したときは
「ありがとう。赤ちゃんを授かりました。無事に生まれるよう見守っていてください」
 初めてのことでとても不安だったが
「ちゃんとご先祖様が守ってくれるよ。大丈夫」
 という母の力強い言葉もあり、落ち着いて出産できた。今は元気な息子と娘、優しい夫に恵まれ、幸せに過ごしている。
 私が仏壇に話しかけるのを見て、3歳の息子も真似をし始めた。
「おはよう。今日はお天気よ」「ただいま。お外、寒かったよー」
 そして極めつけはおやつの時間。
「ねぇねぇ、これ食べていい?」
 腹ペコの息子は、お供え物を見て、私ではなく仏壇に尋ねる。
「おいしいそうね。いただきまーす」
 会ったことの無い祖父母達だが、息子の心の中にはしっかりと生きているようだ。
 私も、こうしてご先祖様の大切さ、ありがたさを自然と教えられてきた。子どもたちにもずっと繋いでいってほしいと思う。

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