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第3回わが家のお仏壇物語

選外秀作「かあちゃん」中村千代子(香川県・64歳)

五歳の時に母が亡くなった。それ以来、十三歳違いの姉を、「かあちゃん」と呼んで大きくなった。  かあちゃんは、五十歳を過ぎた頃から難病を患った。腰から下が麻痺する病気で、数年後には歩けなくなった。それでも私たち家族が行くと、車椅子を使って世話をやいてくれた。おいしいものもいっぱい作ってくれる。私の子供までが「かあちゃん、かあちゃん」と慕い、孫のように可愛がってくれた。

かあちゃんが亡くなった。かあちゃんがいない。三十年以上も通った道が、どこに続く道か分からなくなった。

遺影は笑っているのにした。旦那さんが車椅子を押しているものだ。ちょっと照れている。滅多に笑わない人なので貴重な写真だ。私も一枚、小さいのを貰って仏壇を作った。何か珍しいものがあると、語りかけながら供える。毎晩、作る料理も供える。「下手やなあ」と言ってるかもしれない。 朝はいつもお水をあげる。小鳥の絵がついている湯飲みに入れる。枝に三羽止まってるのと、二羽止まっているのが描かれている。私たちきょうだいは女三人と男二人。だから丁度いい。かあちゃんも寂しくないだろう。  写真の横には、黄色と赤の小さなボールも置いている。最期まで、手の力をつけるために握っていたものだ。その他、大切にしていたものを入れた小袋も置いている。

亡くなって、今年で四年になる。二月の初め、かあちゃんの家で供養をした。立派な仏壇の前に、私の家族も全員集まった。我が家の仏壇には、大好きだったマーガレットを供えた。このマーガレットは、かあちゃんのお見舞いに持って行ったものを挿し木にしたもの。元気に咲いてくれている。 かあちゃんは、二つも仏壇を持って喜んでいるだろうか。それとも、あっちへ、こっちへと忙しく走りまわっているだろうか。

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