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第4回わが家のお仏壇物語

金賞「娘のじいちゃん」宮古睦(北海道・41歳)

父が亡くなったのは8年前…5歳になる娘は「爺ちゃん」を知らない。

その娘が友達に「うちの爺ちゃん優しいんだ」と自慢げに話していた。後で考えると「??」と疑問に思い娘に聞いた。

「どうして爺ちゃんが優しいって知っているの?」

生前の父はとても優しく「子供」が大好きだった。身内の子供だけではなく、近所の子供も分け隔てなく声をかけては可愛がり、悪いことをすればきちんと叱る、面倒見の良い尊敬できる人物だった…。

「写真だよ…婆ちゃんちのナムナムする所に飾ってあるしょ」

確かに父の遺影は笑っている。決して大声ではなく、優しく見守る感じで自然に笑っている。私自身、仏壇に手をあわせるだけで、父が笑いかけてくる気がしていつも心が和む。

「爺ちゃん菓子ちょうだいって、チーンってして、爺ちゃんの写真みたら、いつも笑って『いいよ』って言うんだもん。優しいんだよ…」

思い返せば、お菓子好きの娘は、実家に行くとすぐに仏壇へ行き、声に出して「爺ちゃんこれちょうだいね」と言いチーンと鳴らしお供え物をもってくる。仏間は居間の襖一枚はさんだ隣にあり「チーン」と聞こえれば、姿は見えないが、仏壇に手をあわせる様子が想像できて思わず皆微笑む。

天国の父もきっと笑っているだろう…。

ある日、娘がいつも以上に長く仏壇に向かっていた…見ると、何かゴニョゴニョ話しかけている…。

「何話していたの?」と聞くと「爺ちゃんにね、長生きしてねって話してたんだ」と笑った。

無邪気に仏壇に向かう娘には、本当に声が聞こえている…娘の中で父は生きているのだ。優しかった父を思い出し、目頭が熱くなった…。

そういえば、私もしばらく父に話しかけていなかった。いつの間にか線香をあげ、手をあわせる事だけが習慣化してしまい、何も語りかけていなかったかもしれない…。

早速「父さん…お菓子ちょうだいね」と声に出し、チーンとならした。

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