専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第4回わが家のお仏壇物語
このお仏壇が我が家にやってきたのは3年半前、4年半前に他界した父の一周忌の前でした。新潟にお墓もお仏壇もなく、父の他界を機に母が支度をしました。「お父さんの為!の仏壇を作りたい!!」母は職人の方と話をし、二つのお願いを仏壇の中に入れてもらいました。一つめは「私とお父さん、2匹のうさぎを刻んだものに…」二つめは「お父さんの好きな花、水仙を刻んでほしい」というものでした。父と母は大恋愛!!(後々訊くところによると)の末、結婚。共にうさぎ年生まれです。「お父さんは跳ね回って、追いかけてるのが私。」と父の若かりし頃のやんちゃを苦笑しつつ話してくれたもので、思えば、毎日コーヒーを飲むカップは色違いうさぎ、十五夜の壁かけにも2匹のうさぎ…と夫婦うさぎが我が家には幾つもあったのでした。二人の生涯を重ねての”仏壇へのお願い”だったのでしょう。そして実家が植物園で花に親しみ育った父の何より好きな花「水仙」も。
一周忌を前に設けられた漆黒の仏壇には、共に沿う二匹のうさぎと水仙が温かく刻まれていました。職人の方に何度も「ありがとうございます」と母は礼を述べ、家族みんなで仏前で手を合わせた時には、それぞれの眼は涙でいっぱいでした。「パパ、良かったね」そんな思いで胸もいっぱいの私でした。
兄や姉、その家族…実家を訪れること度々ですが、玄関からまっ先に迎うのは父の元です。「パパ、おはよう!」「パパ〜食べる!?」口々に話しかけ、手を合せます。帰りにも必ず「又くるね!」「ありがとう」です。今にもお仏壇の中から生前お決まりの父の「はい!いらっしゃい!」 「また、おいで」が聞こえてきそうです。母の父への愛が詰まったお仏壇…だからこそ今でも私達家族の集う場はこのお仏壇のある所。これからもずっと…です。