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第4回わが家のお仏壇物語

佳作「お仏壇の思い出」治々和伸光(愛知県・74歳)


わが家の仏壇は幅三尺の小さなものだが、仏間中央にでんと居座り存在感がある。この仏壇は昭和七年に祖父が購入したものである。祖父は私の生前に亡くなっているのだが、仏座の中にいつも祖父の面影を思い描いている。
 父は私が六歳の時に逝き、母は若い身で私達幼い兄弟三人を抱えて苦労の連続であった。夜、仕事から帰ってきて疲れた顔を仏壇に凭せ掛けて沈み込んでいた姿を今でも忘れることは出来ない。そんな時いつもこの仏壇が母の辛さを少しでも救ってくれるように祈った。  私は結婚した時、母の再婚に伴って実家を出た。その後、家を継いだ弟は義父が亡くなったのをきっかけに仏壇を新しくし、この仏壇をどうしようかと相談にきた。私は即座に引き取ることを決意した。
 長い年月のうちに全体が傷み、金箔も剥落して古ぼけていたので修復に出した。傷んでいた箇所は全て一新し、鳳凰彫りの屋根や欄干、柱、蒔絵などの金箔も貼り直して新品のような輝きを取り戻した。  光を放っている仏壇を前にして、これからはこの仏壇がわが家の守り神になってくれるのだと考えたものだ。
 仏壇を引き取って半年後、実家は火災に遭って消失した。もし仏壇が実家にあったなら、跡形もなくなっていただろう。それが私の家に来たために命を永らえることが出来たのだ。私はこのことを偶然とは思えない。この仏壇には祖父や父母の魂が篭っていて、その魂の念がわが家に来るように計らったのではないかと思うのである。  そう思うと仏壇というものは単なる飾り箱ではなく、祖先の霊が宿っている処に見えてくる。私は毎朝、この仏壇の前に座り、わが家の親族九族一切の霊のために般若心経一巻唱えるのを日課としている。そうするとまた、この仏壇への思い出が甦り、有り難さが身に沁みてくるのである。

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