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第4回わが家のお仏壇物語

佳作「白木から金色へ」森永政雄(愛知県・76歳)


道楽者であった父が六人の子供を残して亡くなった。勿論財産などあるわけがない。金が入れば遊興に費やしていた父だったから。  働き手を失った母は戦後の食糧難の時代を食べ盛りの子をかかえ、女工として得るわずかな賃金をやりくりしながら辛苦の日々を斗っていた。  わが家は分家で、お仏壇が無かったのであるが、母はそんな貧乏暮しの中でも、お仏壇を買って父を弔いたいと願っていたが、とてもそんな余裕はない。  そんな母の願いが適えられたのは、兄や姉が中学を出て働きはじめたときであった。暮しにやや余裕がでてきたのである。とはいっても貧乏家庭に変わりはない。  お仏壇を買ったといっても、それは白木造りの安い物で、しばらくして扉が壊れるようなものであった。  それでも母は喜んで、朝晩、お経を読んで父が成仏することを祈っていた。  だが、母は白木造りのお仏壇には満足をせず「もう少し、立派なお仏壇を買いたいものだ」というのが口癖であった。 佳作 森永政雄
 ところが、大事な働き手であった兄も姉も若くして病死をしたので”立派なお仏壇を買いたい”という母の願いは遠くなる一方であり、また亡くなった子供達の後生を弔うためにも「立派なお仏壇を」という母の悲願も遠くなっていった。
 母の希望が適ったのは二十年近くたってからであった。
 私が結婚した際に、妻が持参金を親から万一の時に使え、といわれて持ってきたのであるが、母の願いを、万一の時と考えお仏壇を買ってくれた。そのお仏壇は金色に輝く、黒漆塗りの本格的なものであった。
 当時、老令に達していた母は嫁の手をとり「わが家にも代々伝えていける立派な財産ができた。ありがとう」といって喜んだ。

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