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第4回わが家のお仏壇物語

佳作「また見ぬ母へ」中野雅夫(奈良県・52歳)


母は私を出産してから2週間後に尿毒症で亡くなりました。もう、52年も前のことです。母が亡くなった後、父は私がもの心つく前に、お見合いし再婚しましたので、実の母が亡くなっていたことを知ることはありませんでした。全く気づきませんでした。これも、両親の育て方がよかったからと思います。
 そんな亡き母の存在を知ったのは、30歳で今の家内と結婚する時でした。市役所から戸籍を取り寄せてみて初めてわかりました。知った時は物凄くショックで本当のことを今まで、何で言ってくれなかったのか悩みました。これも父の愛情だったのでしょうか。亡き母のお墓のあることも私には気づかれないようにしていましたし、当然のことながら家には仏壇すらありませんでしたから、生みの母が亡くなったことに気付くこともありませんでした。しかし、こんな両親も交通事故で10年前に他界しました。今は、そんな父と母にはとても感謝しております。貧乏で、共働きまでして私を大学までいかせてくれ、今のわたしに育て上げてくれたのですから。きっと仏壇も買えるゆとりがなかったのでしょう。
 こんなことがあって以来、我が家になかった仏壇を購入し、3人の親を祀っております。しかし、生みの母親の写真が1枚も残っておらず、どのような姿形をしていたのかもわかりません。だから、私には想像でしか思い浮かばないのです。姿形が分からないということは、まるで神様のような存在なのです。毎日、線香とろうそくに火をつけ手を合わせています。「一度でもいいですから、私の夢の中にでてきてくれませんか。」こんなことをいいながら、10回目の正月を迎えています。

仏壇公正取引協議会
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