専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第4回わが家のお仏壇物語
平成七年五月二三日に夫と死別した。生活のために、学習塾を経営することにした。だが、経営してから一年も経たない、平成九年二月二五日に、最愛の息子が突然死。二四歳の若さである。 気が狂いそうになった。私は娘よりも息子の方が性格が似ているので、気が合い、会話をしていても、いつも楽しい時間を共有することができた。
生まれて初めて、「愛する喜び」を知った。だが、もう二度と息子と話をすることができなくなってしまった。息子の写真を掻き集めて、赤ちゃんの時からの成長の記録をたくさん部屋に飾り、毎日、心の中で話かけている。
仏壇には、亡くなる少し前に撮った写真を置いてある。ガールフレンドが送付してくれたものだ。小さく笑い、イケメンの息子の一番良い写真なのだ。
また、写真の横には、息子が生前使用していた、猿のカップに水を入れている。息子はどう言う訳か、猿の小物が好きで、たくさん持っていた。 生きていれば、三九歳である。だが、私には、息子は二四歳で止まっている。若くて、瑞々しい顔とスタイルのままだ。
毎日、朝晩、仏壇の前で祈る時、心が一番落ち着いているのを実感している。今の私にとって、息子が神であり、仏様である。
祈る時、心の中で感謝の言葉を繰り返している。息子と過ごした二四年と五ヶ月が、私の人生で一番充実していて、幸福な時だったと、今は言える。 息子の名前は、「玉樹」。世界で一番好きな名前と断言できる。