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第4回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇考」西野洵子(京都府・64歳)


「お母ちゃんが大事にして来た仏壇を守っていくのが、長男の嫁の勤めやろ!」。舅・夫・姑の順に送り、子供のない私が今後施設に入所する事になっても持って行ける小さな仏壇に替えたい旨、親戚に伝えた時の返事が冒頭の怒声であった。
 幼い頃から両親に先祖への感謝の気持ちを忘れるなと教え込まれ、嫁ぎ先では姑の仏壇を守る姿を背中で学んだ。そんな私にとって仏壇は生きている人間の住居以上に大切なものである。しかし、先祖を敬う尺度が仏壇の大きさや値打ちと連動するものではない事も十分承知している。
 他人が何といおうとこの仏壇の主導権は私が握っている。当然縮小化しておくべきだ。そんな思いで仏壇屋さん巡りが始った。機能を優先した簡略化された仏壇。確かに効率的である。だが、ふと眉が固くなる。この中に納まる舅・夫・姑ははたして満足してくれるだろうか…。一瞬にして迷いが消え、私の終の住処に運んでもらう事にした。
 そして、迎えた入仏式。喧喧ごうごうの親戚は誰一人参加せず。心静かに住職の読経に耳を傾けていると、柱が裂けんばかりの力強い撓り音が3回、仏間に轟いた。御霊があの世から戻って来た事を気ずかせてくれたのだろう。仏壇を替えないでよかった。とつくづく思った。仏さんに迷わず帰って来てもらえたからである。
 今、私は独り暮らしだが、一日のうち何度仏壇に向きあい語ることか。そんな幻の4人家族を実感しながら充足の日々を送らせてもらっている。
 年月を重ねた一族の歴史の重さを偲ぶには、やはりこの仏壇を受け継ぐ必要と責任があった事をしみじみ思う。今更乍ら親戚に感謝感謝である。

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