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第16回わが家のお仏壇物語

銅賞「お仏壇は村のきずな」 山口明彦(福井県・63歳)

 私の村ではお講様を守っています。親鸞聖人の祥月命日に合わせて順番に村の家々が宿となり、正信偈の唱和と御文の読み上げを行います。祖父が亡くなり、父が亡くなり、十数年前から私がお講様に出ています。

 お講様の導師は、昔は家柄で決まっていました。我が家ともう一軒がいわゆる上席格だったようで、二軒の家長が交代で導師を務めてきました。そのため祖父は幼少の頃から私に正信偈を覚えさせました。強制はされませんでしたが、祖父の読経の横でお東流の節回しで正信偈の文言を意味も分からず唱え、たまに家族に褒められると嬉しくて、調子に乗ってどんどん覚えていきました。英会話でいうシャドーイングだったのだと思います。

 そのおかげで、私がお講様に出て、導師をすることになったときも、どうにか務めることができました。子ども時代に身につけたことは、結構忘れずに残っているものです。

 現在では、各家が順番に導師を務めるようになり、時には菩提寺の住職にきていただいてご指導いただくこともあります。写真はその時のものです。ご住職からは「各集落ごとに節まわしにクセがあります。直していただきたいような、村の伝統として残していただきたいような、ビミョーなところですね。」と言われています。

 お仏壇を閉めたあとは、村の寄り合いのような場になります。区長さんを中心に、農作業のことや村祭りの準備のことなど、わいわいと話しているうちに、すぐに一時間ほどが過ぎていきます。

 十軒ほどの小さな村が、仲良くやって行けているのも、お講様のおかげ、ご先祖様のおかげだと、村のみんなで喜んでいます。ときには、「いつまでお講様を続けていけるんやろのぉ」という気弱な声も聞かれますが、先のことの心配よりも、今のお講様を大切にしていれば、それでいいのではないかと私は思っています。

 今年は初孫が生まれる予定です。私の孫は、お経を覚えてくれるかなと、楽しみ半分、不安半分です。

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