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第16回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇は究極のエコ」 広瀬常男(滋賀県・68歳)

 墓参りもオンラインで済ませる時代に、仏壇は古い? 要らない? 未来はない?

 父は家の一番良い間を仏間にし、出世仏壇といって出世するたび仏壇を買い替えた。亡き父は、15で親に死に別れ、そこから裸一貫で働いて、親の五十回忌には高級車一台分に匹敵する値段の仏壇を買ったものだ。

 仏壇が絶滅したら日本は貧しくなる。今はもう、生きている人のことで精いっぱいで、亡くなった人の供養にまでお金をかけられる、古き良き時代ではないという人もいるかもしれない。しかし、どんなに時代が変わっても人が亡くなり、亡くなった人をしのぶ人がいるのは変わりない。仏壇じまいをするということは、自分のご先祖様が何を大事にしてきたかを知ろうとしないのと同じことだ。母は介護施設に入っているが、そこの枕元に置いておける携帯仏壇を所望した。父(母の夫)をお手元供養するためだという。母はそれを、まるで夫をいたわるような手つきで撫でている。それくらい、仏壇は日本人の精神と切っても切れぬものなのだ。

 この前、仏壇の購入下見に行った。彫りの精緻さ、金箔の金の純度、漆を使った塗り、宮大工の伝統技だ。職人さん曰く、仏壇の極意は洗濯にあるそうだ。ほぞ組みと言い、釘を一本も使わず木を凹凸に組み合わせて接合してあるからこそ、洗濯可能だとか。分解して漆を塗り替え、金箔を押し、組み立てる。洗濯すると輝きが増すし、ばらして掃除することで先人の技術を学び、継承し、今の職人の新しい感性もまた籠める。洗濯すれば数百年でも使える。仏壇は時代錯誤のように見えて、実は究極のエコだ。百年も二百年も手を合わせられる仏壇を若い世代にも伝えたい。

 私はつらい時、仏壇に話しかけることで頑張ってこられた。手を合わせるのは、父や祖父母に対してだけでなく、背後にあるもっと広くて深いものに対してもだ。手を合わせて無心になることで、平らかな気持ちを取り戻せる。

仏壇公正取引協議会
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