仏壇選びの達人

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第16回わが家のお仏壇物語

佳作「DIY仏壇」 横山恵津美(愛知県・65歳)

 ある日届いた段ボールの箱、たいして大きくも重くもない。夫が梱包を開けて何やら組み立て始めた。

「おーい」と私を呼ぶ声がする。そこには三十センチばかりの箱状の物があった。よく見るとそれは仏壇だった。紫色のクレマチスの花の模様の漆塗風の塗装の扉、金色の正面の壁はプリントした厚紙をはめ込んである。決して豪華でも高価なものではないが私には充分に価値のある物だった。やっと父と母の安住の地が出来たようで胸の奥が熱くなった。

 父と母が亡くなってから、私は二人の位牌を持って旅してきた。仕事を変わる度に位牌を持って引越しをする。そして小さなトレイに並べて置くのだ。「ごめんね、こんなところで。」申し訳ない気持でいっぱいだった。「不甲斐ない娘でごめんね」と謝ることしか出来ない。それでもトレイの上の二人が心の拠り所だった。

 縁あって今の夫と再婚することができて私の旅は終わったのだ。父と母の放浪も。トレイの上の二人を不憫に思ったのか、夫は私に内緒で注文をしていたのである。完成した仏壇を見た時、頬を伝ったのは感謝と少しばかりの後悔と安堵の涙だった。

「良かったね父さん、母さん、落ち着くでしょう。」狭い我が家ではタンスの上にしか置けないけれどここで我慢してね。やっと二人の永遠の住まいが見つかったのである。

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