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第16回わが家のお仏壇物語

佳作「能登半島、わがルーツと仏壇」 奥原一三(富山県・68歳)

「震度5強と聞いてビックリしたけど、無事で良かった。…お仏壇も大丈夫だった?」

今年元日に能登半島で起きた大地震。電話をかけてきたのは九州に住む親戚の婦人(90代)です。私ら一家が父の仕事で、富山県高岡市の実家を長年離れていた間、家の面倒を見てくれていた方です。

 わが家の仏壇は、1932年(昭和7)に金沢市で開催された『産業と観光の大博覧会』で祖父が買いました。多くの仏具店が出展していたそうで、祖父は気に入った仏壇の中から能登出身の職人が手掛けたものを選んだとのこと。わが家のルーツが能登半島だからです。細かい彫り、黒檀や象牙、サンゴなどを使い、見る度に新しい発見がある仏壇です。

 母は亡くなる前、私に言いました。「毎日1分でもいいからご仏壇の前に座ってちょうだい。ご先祖様のためにも」と。

 拙宅は、能登半島の付け根に位置します。能登では過去何度も地震が発生、その度に明治時代に祖父が建てた墓は少しずつ隙間が広がり、このままでは危ないと感じ、昨年11月に建て替えたばかりでした。そのせいか、今回の地震では全く被害がありませんでした。倒壊したり、墓石の向きが変わった墓もありましたが。

 能登の震度は7。わが家の先祖につながる方々もかなりの被害を受けたのではないかと思うと、胸が痛みます。能登のどこが奥原家のルーツなのか知りませんが、昨春、七尾市に行った時、何かに招かれるように、通りかかった仏具店に入りました。

 今朝もいつものようにお仏壇前に座り、その店で買った刷毛で、仏具を掃除しました。地震で亡くなられた方々のご冥福を祈りながら…。 

仏壇公正取引協議会
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