専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第16回わが家のお仏壇物語
我が家のお仏壇は、リビングのチェストの上にある。三年前に購入した、母を祀るための小さなお仏壇だ。
女手ひとつで育ててくれた母は、齢五十三で急逝した。くも膜下出血だった。一人娘の私が喪主となったが、三十路になったばかりの小娘は、あまりに弔い事に疎かった。なんとか葬儀は終えたものの、仏具選びは途方に暮れた。当時は、2LDKのアパートで、夫と二歳の息子と三人で暮らしていた。当然仏間などなく、小さな子供も居るのに、お仏壇なんて置けるのだろうか。
葬儀社の方に相談に乗っていただくと、今はアパート住まい向けのコンパクトなお仏壇があるのだと知った。最愛の母を失って心の拠り所を求めた私は、迷うことなく小さなお仏壇を我が家にお迎えした。
母は、二歳の息子のことを溺愛していた。母が急逝し、息子からばあばの記憶が薄れていってしまうことが、私はとてつもなく悲しかった。だが、私が折に触れてお仏壇に手を合わせる姿を見て、息子まで、見よう見まねでおりんを鳴らし、手を合わせるようになった。「ばあばにみせる!」と、石ころを握りしめて公園から帰ったり、手作りしたアクセサリーや、幼稚園でもらったご褒美カードを自慢げに飾ったり。お仏壇を通して、息子の中で母が生き続けているのだと感じられる。そんな息子の姿に、私の心はどれほど慰められたことだろう。お仏壇があってよかったと、三年経った今、心から思う。
昨年、次男も産まれた。たとえ直接抱いてもらうことは叶わなくても、ばあばやご先祖様が息子達のことを愛し、いつでも見守ってくれているのだと、お仏壇を通していつか感じてもらえたら嬉しい。
我が家の小さなお仏壇は、息子たちからの贈り物で、ますます賑やかになっていくことだろう。