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第16回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇と私」 祖鞍あいこ(神奈川県・49歳)

 名古屋の祖母が亡くなり、長男だった父はお仏壇を引き受けなければならなく、私たち家族一家は、東京の父の社宅から横浜の一軒家に引越した。

 当時、小学四年生だった私には、お仏壇の意味が分からなかった。

 東京の生活が好きで、横浜に来てからは学校生活に馴染めなかったので、それから仏壇を憎んでいた。

 でもその中には、大好きだった名古屋のおばあちゃんと私は会えることはなかったが、おじいちゃんの位牌があるときいている。もっと言うと、この世に誕生することのできなかった父のお姉さんの位牌までも。

 五年前には突然、父も逝ってしまった。だから当然、今は父の位牌もある。

 母はお仏壇には花を欠かさず、ご飯を炊いた日はお仏飯もお供えする。そこには父の遺影もあり、父がここにいると思う。

 だから実家に帰った時は必ずお線香をあげ手を合わせる。「念ずる」とは、漢字の通り「心」を「今」に置くことだ、ということをある僧侶に教わった。右手が過去で左手が未来で、それを合わせて「今」に心を向ける。

 小四当初は嫌いだった仏壇は、今は好き嫌いの対象ではなく、ご先祖様となった家族の居場所と思う。

 だから今年、無事に五十才を迎える私の命はご先祖様のお陰な訳で、そのことを感謝して念じる私は、我ながら大人になったと思う。

 そして、お仏壇という、手を合わせる場所が身近にあることにも感謝している。

 父の好きだったお菓子をお供えして手を合わせるだけで心が落ち着く。「過去は去った時にありがとう。未来は未だ来ない時によろしく。そして『今』を大切にする心を教えてくれて、ありがとう。」

 合掌。「南無阿弥陀仏」

仏壇公正取引協議会
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