専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第14回わが家のお仏壇物語
私が幼い頃から、新年には母の実家に親族が集まって、お仏壇がある座敷でテーブルを囲んで食事をしていた。
子どもの頃は、久しぶりに会う従兄姉たちと遊ぶのが楽しかった。酒を飲みながら談笑する大人たちを祖母は用意した料理でもてなし、祖父は静かに熱燗を飲んでいた。
楽しくてあたたかい、新年の集まり。
私は地元を離れ、そのまま就職・結婚したけれど、新年には必ず帰省して母の実家に集まった。
いつの間にか自分の子どもたちが従兄姉の子たちと遊ぶようになっていた。
その頃には祖父は亡くなり、祖母も足を悪くして部屋で過ごすことが多かったけれど、その日はお仏壇のそばにちょこんと座って、静かに微笑みながらひ孫たちの姿を見つめていた。
5年ほど前に祖母も他界してしまった。
けれどお仏壇の前で久々に会った従兄姉たちと近況を報告しあっている時、祖父や祖母のあたたかなまなざしを感じるような気がした。
そんな集まりも、2年前の新型コロナウイルスの流行でなくなった。
最初は「また来年」なんて言ってたけれど、去年とうとう伯父がいった。
「もう私たちも年をとったし、みんなに集ってもらうのは難しい」
この感染症の流行が落ち着いても、世界は元通りにならないのだろう。
だけどあの楽しかった記憶も、祖父母を思う気持ちも忘れないでいたい。
2020年の新年会を最後に、もう2年以上母の実家には訪れていない。
早く祖父母のお仏壇に挨拶に行ける日が来ることを願っている。