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第14回わが家のお仏壇物語

金賞「お仏壇のお洗濯」 森千鶴(滋賀県・63歳)


子どもの頃、私はいつも祖母のお勤めの声で目が覚めた。祖母は朝晩お勤めを欠かさなかった。それは父母に受け継がれ、今は弟夫婦が受け継いでいる。認知症の母は今でも「お仏飯をお供えしたか」と、毎朝、弟夫婦に尋ねるそうだ。
私が結婚した夫の家も実家と同じ宗派だった。夫は実家に行ったときは、いつも、まず最初にお仏壇にお参りをした。そしていつだったか、実家のお仏壇がお洗濯されていたのを見て、我が家もいつかそうしたいと思ったそうだ。
去年の春、ようやくお仏壇をお洗濯してもらうことになった。九十三才の義母は、その頃から体調が思わしくなかった。お洗濯したお仏壇が戻ってくるお盆まで、義母は元気でいてくれるだろうか。きれいになったお仏壇に、義母も一緒にお参りできるだろうか。私たちはとても心配した。
そして去年の十二月、「お取り越し(各家庭で行う報恩講)」に、別に暮らしている長男家族と二男家族も集まり、みんなでお参りした。お取り越しは、家族がそろって仏壇にお参りする、我が家にとっては一大行事である。
認知症が進み、日増しに足腰も弱くなっている義母だが、お仏壇の前で手を合わせてお念仏を称えている。
「お線香の匂いは苦手」という小学生の孫たちも、お経の本を開いてお勤めをしている。
一才になったばかりの孫は、お念珠をおもちゃにして遊んでいる。その孫を、ひいおばあちゃん(義母)がにこにこしながら見ている。
いつもは動き回ってじっとしていない三才の孫も、その日はパパの膝。お仏壇にむかって手を合わせている。
父や母、祖父母、それ以前にもつながっている、私たちのたくさんの家族。その家族がずっと大切にしてきた思いや願いを、私たちも伝えていくことができるだろうか。
お取り越しの時間、きれいになったお仏壇の前で、私たちはたくさんのあたたかな眼差しにみつめられているような気がした。

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