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第14回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇的玉の輿」 加藤誉子(大阪府・55歳)

この写真からわかる通り、うちは寺である。私の実家にはお仏壇が無かったので、私はこれを“仏壇的玉の輿”と考えて、たいそう喜んでいた。
ところが、浄土真宗では寺も、寺の中のものも全て門徒のものなのである。私物ではない。なので、寺で何か大きな行事があると門徒さん達が集まって来てみんなで準備をする。仏具なんかもみんなで磨くし、傷んだところがあればみんなでお金を出し合って修繕をする。もちろん毎日みんなで集まるわけにはいかないので、日々のお世話は寺の者がする。
ある日、この写真の部分の屋根裏に何かが住みつき始めた。明け方に住職が寺を開けにいくと動物が走り回っている音がするという。
大学生の娘がハクビシンの親子がうちの本堂に入っていくのを目撃しているから、恐らくその親子に違いない。
天井を踏み抜かれる恐怖と、電気配線をかじられて発生する火事の不安で、こっちは気が気ではない。そんな恐怖と不安の中、“知人の寺にもハクビシン住み着く。”の一報が。最速電話を入れて確かめた。
「そうなのよ。天井踏み抜かれたり、火事出しても大変でしょ。お供え物かじられたりもしてたしね。業者さんに来てもらったわ。え? 駆除代? 100万したわよ!。」
「……。」
うちは、自力で退散してもらうことにした。
大学生の娘がかわいい声で叫ぶ、
「出てけぇー!」
住職は声明で鍛えた美声を張り上げた、
「うおりゃぁぁあ。」
前住職の老僧はしぶい声で諭した、
「ここはな、あなた方の住むところやない。」
どれが効いたのか、一ケ月もしないうちに足音の主たちは去った。うるさい寺だと思われたのか。ひとまずはよかった。
仏壇的玉の輿も楽じゃない。

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