仏壇選びの達人

専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報

第14回わが家のお仏壇物語

佳作「夫も選んだ仏壇」 角谷まさ子(大阪府・76歳)

その日は朝から蒸し暑く、早朝よりセミの鳴き声が一層暑苦しく近くの公園から聞こえてきた。
お盆が近くなった日の朝、新聞に仏壇の広告が入っていた。夫はこの広告をじっと眺めていて、
「お母さん。お昼から仏壇を見に行こうよ」
「えー、仏壇? 仏壇なんて何で買うのよー」と、
私は夫に必死になって、今、仏壇を買う必要がどうしてあるのかと。そんなことを何故いうのかと言い続けた。タンスや本箱を見に行くのならわかるけどと、言いながら、心の中で泣いた。
夫は一年前、肺がんを宣告され手術も出来ず、抗がん剤治療を繰り返し、次第に頑丈な体躯はスマートになり、太い働き者の指は繊細な事務職の指になって残された時間が短いと感じていたのかと思った。
口に出して一言も言わない、弱みを見せない人だった。
夫の持っていた広告を眺めてみた。何となく色やデザインの好みがわかったがお互いに仏壇の話題は忘れたようにしなかった。
その二カ月後、夫は静かに旅立った。
夫が眺めていた仏壇の広告を記憶に残していた私は、仏壇選びに走った。確か夫は紫檀を選んでいたはずだ。いずれ、私もこの中に入った後は息子の家にお世話になるだろう。息子夫婦にも納得してもらい選んだ。
今、子供達夫婦、孫達は仏壇の前で手を合わせ、いつも見守ってくれてありがとうと。幸せな家族に感謝している。

仏壇公正取引協議会
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