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第14回わが家のお仏壇物語

佳作「お仏壇に全員集合」 高田友子(滋賀県・36歳)

今夏、お盆に実家へ帰り、お仏壇の掃除をしていたところ、一枚の古い写真が出て来た。日付は93年11月23日。今から28年前の写真だ。掃除の手を休めて見入ってしまった。
写真の前列左側に写っているのが小学生だった私だ。記憶をたどっていくと、この日が曾祖父の五十回忌だったということ、和尚さんがカメラのシャッターを切ってくれたことなどを思い出した。最近では廃れてしまった慣習かもしれないが、その頃は、お葬式や法事のとき、親族一同の写真をよく撮っていた気がする。この写真に写っている祖父母、大叔父大叔母らは、今はお仏壇の中に眠っている。写真の中の人物に目を転じて順々に眺めていくと、この人とあの人、こっちの人とあっちの人、皆どこか似通っている。血が繋がっているのだから当然と言えばそうだけれど、あらためて眺めると感慨深い。そして、何やら勇気づけられる。自分はたった一人でこの世に生きているのではなく、いろいろな人との縁や繋がりのなかで生まれ、生かされているのだ、と。日頃はそれほど信心深い質ではない私でも、自然と感謝の心が生まれる。
そうこうしているうちに、和尚さんがお盆の棚経にいらっしゃった。この写真を撮って下さった和尚さんである。写真を見せて事の次第を言ってみると、「ああ、確かに覚えています。懐かしいわぁ。私がまだ新米の住職の頃でしたね」と、目を細めて長い間見ておられた。こうやって親族が集まれるのも、お仏壇があるからこそだ。今はコロナ禍でそれが叶わないけれど、こうした写真がこれからも撮れることを願っている。
私はお盆のあいだ、写真を仏間に飾っておいた。お盆にあの世から帰ってきた、かつて写真に写っていた人たちも、これを見て、思い出話に花を咲かせていたことだろう。

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