専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第14回わが家のお仏壇物語
私は看護師になって10年が経とうとしている。
私が看護師になれたのは、お仏壇の中にいる大好きだったじいちゃんの存在がある。
高校生の時じいちゃんが脳梗塞で入院し、病院にお見舞いに行っていたことがきっかけで看護師を目指した。
看護師の国家資格の合格をもらうと同時に、じいちゃんの具合が悪くなった。大腸癌だった。
病院で「余命はながくて一年です。」と医師から言われ、大好きなじいちゃんが死んじゃうなんて想像できなかった。2ヶ月入院し、家族で自宅で看取ることにした。新米看護師の私にはじいちゃんの血圧を測り、会話することしかできなかった。毎日下血して弱るじいちゃんをみて、毎日じいちゃんが生きれるようにとこの仏壇に願っていた私がいた。
在宅で生活し始めて1ヶ月。私は仕事が休みの日じいちゃんのベッドに寄り添ってすごした。
1秒たりとも優しいじいちゃんのそばを離れたくなかった。
最後の数日は、大好きな焼酎宝を口に湿らせて家族でじいちゃんを囲み涙した。
最後の晩私はじいちゃんのベッドに寄りかかりながら座り眠り込んでしまった。眠る前に左手で、あっちにいきなと言わんばかりに頭を軽くポンポンするじいちゃん。数時間後静かに息を引き取った。最期に仏壇からあげてもない線香の香りがし家族みんなで「お迎えがきたんだね。いままでありがとう」と見送ることができた。
みんなに見送られ、じいちゃんらしく自宅で最期まで過ごせたことを通して、私は訪問看護師になることを夢にした。
10年が経ち、今は二人の子供のお母さんになった。
今年から訪問看護師になることが決まり、辛かった病棟勤務を終えたことを仏壇に報告した。
なぜだかわからないけれど、じいちゃんの遺影を見ていたら涙が出てきて、温かい気持ちになれた。「よくがんばったな」なんて声が聞こえた気がして涙が止まらなくなった。
仏壇に誰かの最期に立ち会える、素敵な看護師になろうと誓った。
今はじいちゃんに触れられないし声も聞こえないけれど、仏壇に手を合わせると自然とじいちゃんに語りかける自分がいる。
これからも心の中で生きてるじいちゃんに手を合わせにいこうと思う。
私は素敵な夢を叶えさせてもらえて幸せを感じる。じいちゃんありがとう。